ひとつの町を呑み込んだあと、それは突然制止した。静止と言っても、その何かが死んだとは思えない。飲み込まれた町は、地面から巨大な半円を盛り上がらせて、今まで取り込んだ個々の特徴的な部位が生え出した芽のように突起している。それは、信号機だったり、どこかの家の窓であったり、誰かの靴だったり、壊れた鉄筋であったり、植物であったり、人の手足であったり、動物の顔であったり…。それぞれがまだ生きているように時々動いたり、声のようなものを発したりしている。
国の特別機関によって、物理的な破壊を試みたようだけど、爆発も、それに生じる熱も、すべて吸収され取り込まれてしまうため、なす術がない。あらゆる科学者や研究者、宗教学者や哲学者が、その出来事に対して恐怖以上に興味を抱き、カンブリア爆発だとか異星人の襲来だとか、神の啓示もしくは、世界の終末論だとか、一般人が聞いても馬鹿げているような無駄話をしている。
何かが制止して2週間が経った。また、変かが起こった。取り込まれた町—と言っても突起した半円の巨大な物体だが—に、多数の人間が歩いている。いや、もう人間ではないのかもしれないが、人間のような姿をしている。一人一人に表情はなく、様々な服装をしていて、年齢も様々だ。ただ、歩いている。最初は、みんなそう思った。だがしばらく観察していると、おかしな事に気づく。彼らの足は、地面と常に繋がっており、時々何かにつまずくのだが、すぐに接触している地面からなにか黒い影のようなものが延びて、彼らを支える。
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